不動産投資を始める際は、家賃の下落を加味したうえで、投資すべき物件であるか見極める必要があります。
本来物件に投資する前は収支計算を行いますが、プロの投資家は家賃が下落した場合のシミュレーションも考慮したうえで投資の可否を判断します。
しかし、初めて投資する場合には、そもそも家賃が下落するということを知らなかったり、不動産会社に見せられた家賃のシミュレーションを鵜呑みにしてしまったり、どれくらいの家賃下落率を考慮するべきかわからないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回、家賃下落が発生する理由と下落率、そして家賃下落に対する3つの対策をご紹介します。
これから不動産投資を始める方は、本記事を読んで家賃下落率を理解し、収支シミュレーションに用いるようにしましょう。
Contents
家賃下落が発生する理由は需要がすべて?
家賃は老朽化するたびに下落すると言われています。しかし家賃が下落する理由は、最終的には入居者の需要がポイントになります。
老朽化したとしても、需要がある物件であれば家賃を下げる必要はなく、空室になることもありません。
しかし、不動産投資を行うと、必ずといえるほど競合物件が現れます。特に日本人は新しいものを選びがちだと言われており、新築物件の方が魅力を感じるのでしょう。
とはいえ、30年間家賃を下げず、満室を維持している物件も存在します。高い需要がある場所であり、競合物件も少ないことが要因であるためでしょう。
つまり、不動産投資を始める際は、競合物件が少なく、需要が高い物件に投資することで家賃下落を抑えることが可能です。
しかし、現実は長く運用していると家賃は下落してしまう可能性が高いです。少しでも家賃が下がりにくい物件を見つけることがベストではありますが、多くの物件は家賃が下がってしまうため、物件に投資する際は、下落率を想定して収支シミュレーションを行うのが望ましいでしょう。
家賃下落率は何%?
では実際どれくらいの家賃下落率を想定すべきでしょうか。
2013年に三井住友トラスト研究所が発表した「経年劣化が住宅賃料に与える影響と理由」によると、賃貸マンションの家賃下落は年1%前後であることがわかります。
しかし新築時から2年目までの家賃下落はほとんどなく、3年目から下落が発生するデータとなりました。
賃貸借契約は一般的に2年間であるため、3年目に入居者が更新せず退去した後の再募集する際に家賃を下げていることが原因でしょう。
しかし実際には1サイクルで家賃が下がることは少なく、5年目くらいからの家賃が下落し始め、25年間に渡って下落率が上昇するケースが多いです。
下記の表は三井住友トラスト研究所が発表したデータを基に、家賃下落率をまとめたものです。投資物件の家賃下落を加味した収支計算を行う際は以下の下落率を考慮してシミュレーションすることをおすすめします。
築年数 | 新築時からの家賃下落率 |
5年 | 2%~5%前後 |
10年 | 5%~10%前後 |
15年 | 10%~15%前後 |
20年 | 15%~20%前後 |
25年 | 15%~25%前後 |
家賃下落を回避する3つの対策方法
さきほどの表で、築年数が上がることで家賃が下がるとお伝えしましたが、オーナーの立場としては家賃下落は避けたいものです。
家賃下落を回避する方法は大きく分けて2つです。
- 入居者の初期費用を抑える
- 付加価値を付ける
入居者の初期費用を抑える
入居者の立場からすると、初期費用を抑えて引越ししたいと思う方が多いです。しかし初期費用が支払えないという理由で引越しできない方もいらっしゃいます。
引越しできない方が多いということは、入居者の間口が狭まり、空室期間が長引くため、家賃を下げざるを得ない状況になってしまうことになります。
引越しの初期費用には「敷金」「礼金」「仲介手数料」「前家賃」「保険料」「鍵交換代金」「ハウスクリーニング費用」などがあり、合計するとおおよそ家賃の6か月~7か月分と言われています。引越し業者を利用する場合は更に大きな初期費用となります。
オーナーは敷金礼金ゼロなどの対応をすることで、入居者の初期費用を抑えることができ、家賃を下げる前に入居者確保につなげることができるでしょう。
付加価値を付ける
不動産投資をするうえで、競合物件は必ず現れます。競合物件に打ち勝つには例えば下記のような差別化や付加価値を付ける方法が有効的です。
- 家具家電付き賃貸物件
- インターネット使い放題物件
- IoT賃貸物件
- リノベーションを行う
家具家電付き賃貸物件
家具家電付き賃貸物件は、特に会社員や転勤族の方に需要があります。
「家具をそろえるのが面倒くさい」「すぐに転勤があるかもしれないから、家電は買わない」という方に向けて人気です。
家具家電も大きな費用となるため、できれば出費を抑えたいと思う方が多いことが理由です。家具家電がついて初期費用が抑えられるので、多少高い家賃を払っても入居してくれる可能性は高まります。
一方で、入居者やエリアの特性として、入居者が一日の長い時間を家の中で過ごす可能性がある場合は、インテリアなど環境にこだわるケースが多いため、家具家電付き住宅は向いていません。家具家電付き賃貸物件にする際は、入居者ターゲットを絞ったうえで判断しましょう。
インターネット使い放題物件
近年ではインターネット使い放題の物件は当たり前となってきました。
ネット社会である現代では欠かせず、なおかつポケットwi-fiでは通信速度が遅い傾向にあるため、個人で契約するよりあらかじめ賃貸物件についている方が人気は高いです。インターネットの工事にも時間がかかりますが、インターネットはもはや入居してすぐ必要になるインフラですので、非常に需要が高いです。
もちろんインターネット料金を加算した家賃に設定する必要があるため、相場からかけ離れた賃料にならないように注意が必要です。
IoT賃貸物件
より利便性が求められる現代では、IoTの需要が高まり、賃貸物件にも導入されています。
例えば外に居ながらスマホ1台でエアコンをつけることができたり、鍵の施錠を確認することが可能です。
また、家電の進化も進んでおり、外出先でもスマホで1台で炊飯器を炊くことができたり、冷蔵庫の中身を確認することも可能です。
今後ますます需要が高まるIoTに対応できる賃貸物件にすることで、他との差別化が可能となります。特にファミリー向けの物件に適しているといえるでしょう。
リノベーションを行う
都心部は過密で新築物件が建てづらくなった背景もあり、中古物件をリノベーションしバリューアップする事例も多く見られます。スーモやアットホームなどの検索欄にも「リノベーション物件」「リフォーム済み」の項目が増え、入居者確保につながるようになりました。
以前は上記の項目はなく、単に築年数で表記されていたため、リフォームを行っても入居者の目に届かないことが難点でした。
しかし新たに項目が追加されたことにより、入居者も検索できるようになり、空室率の低下および家賃を下げなくて済むケースも増えています。
もちろんリノベーション費用を考慮した家賃設定にするのが通常ですが、高額過ぎる家賃設定にすると、検索に該当しない場合もあるため注意が必要です。
不動産会社とのお付き合いも重要
先ほどもお伝えした通り、家賃下落が発生する原因は「空室」です。つまり、空室が発生しなければ家賃を下げる必要性はなくなります。オーナーは如何に空室期間を短く抑え、継続的に入居者を維持できるかがポイントになります。
そこで、オーナー自身ができることとしては、不動産会社の選定や関係構築が挙げられます。
例えば、管理委託する不動産会社と関係を深め、入居募集の斡旋に力を入れてもらうことで、空室期間が短くなり、家賃が下落する確率を抑えることも可能です。
不動産の家賃は物件要因にフォーカスされがちですが、入居手続きや入居中のサービスなども入居率に影響するため、入居者の募集を行う際には賃貸仲介力が高い不動産会社を選定することが望ましいでしょう。
「管理手数料が相場の5%より安い」「仲介手数料が半金」など、さまざまな不動産会社がありますが、入居者を斡旋できる客付け能力が高い不動産会社を選ぶことが、トータルコストを削減することにもつながります。
既に不動産投資を行っている方は、管理委託している会社や仲介を依頼している不動産会社の再度見直してみましょう。
まとめ
この記事では、家賃が下落する理由とその下落率、それを防ぐ対策について紹介してきました。
家賃は空室によって下落するため、オーナーの方は如何に空室期間を短く抑えるかがポイントになります。
しかし、実際の不動産は築年数が経つことにより家賃が下落していく可能性は高いです。ですので、不動産投資を行う際は、下落率を加味したシミュレーションで物件の判断を行うことが望ましいでしょう。
また、家賃下落を発生させないためには、上記で紹介した方法などから、実践できそうな対策を検討してみましょう。同時に不動産会社の管理力や仲介力の見極め、関係構築も重要です。