今の本業だけでは貯蓄ができないことから、近年では副業をする方だけでなく、副業を認める企業も増え、ダブルワークを選択している人も多いです。
そんな副業が盛んになってきた今、注目を浴びているのが不動産投資です。不動産投資は自身が働かなくても、投資した不動産が収入を確保してくれる不労所得の代表格です。
しかし、不動産投資をする上でクリアしなければならないのは「金融機関のローン審査」でしょう。一般的に不動産の価格は高く、多くの方がローンを利用して投資していますが、「自分では融資が通らない」と思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。
不動産投資のローン審査は、申込者年収より物件の事業性を優先するので、諦めるにはまだ早いです。
今回は不動産投資のローンに着目し、どのような仕組みで、融資審査基準はどのような計算方法なのかを紹介します。
Contents
不動産投資のローンとは
不動産投資のローンとは、不動産投資の目的で金融機関から借入するローンのことです。
住宅ローンは聞いたことがある方も多いと思いますが、不動産投資ローンの場合、事業に投資するという点から「事業用ローン」という扱いになります。
事業用ローンを借りる場合、金融機関は投資する不動産の「事業収支」「立地」「築年数」から物件の価値を算出し、融資の可否を判断します。
収益が良くても築年数が古ければ物件の価値は見出せず、また新築であっても収益が悪ければ金融機関は融資してくれません。
もちろん申込者の年収や将来の事業継承者なども関与しますが、一番の特徴は投資物件の収益性や資産価値を基準に判断されるという特徴があります。
事業用ローンの種類
事業用ローンには下記の2つのタイプがあります。
- 固定金利型
- 変動金利型
固定金利型
ある一定の年数までは金利が固定であるタイプのローンです。金融機関によって異なるものの、「3年固定金利」「5年固定金利」「10年固定金利」などがあります。また、近年では「35年固定金利」という金融商品もある金融機関もあります。
固定金利のメリットは、固定期間までは一定の返済額になるという点です。そのため不動産投資の収支シミュレーションが立てやすくなります。
また、急激なインフレによる金利上昇があった場合でも、固定期間までは金利が一定なので、急に高額返済になることはありません。
変動金利型
変動金利はある一定期間が過ぎると、金利の見直しが入るタイプのローンです。金利の見直しは、増加する場合もあれば、減額になる場合もあります。
金融機関によって変動金利の期間が異なり、「1年変動金利」「3年変動金利」などさまざまタイプがあります。
一般的には固定金利より変動金利の方が適用金利は低いため、毎月の返済額を抑えたい方にオススメです。しかし市場金利が上がった場合は連動する傾向があり、金利が上昇する可能性も高く、毎月の返済額が増額する恐れがあります。
そのため、インフレが起こった際は、毎月の家賃収入より返済額の方が大きくなる場合も考えられるため、常に注意が必要なタイプのローンです。
金融機関の種類と融資期間、金利(2022年時点)
不動産投資ローンを貸してくれる金融機関と、融資期間、金利について紹介します。2022年時点での目安となりますので、不動産投資を検討されている方は是非参考にしてください。
金融機関の種類と金利
不動産投資ローンを貸してくれる金融機関は以下の5つです。
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫
- ノンバンク
- 日本政策金融公庫
都市銀行
都市銀行と言われるメガバンクの不動産投資ローン金利は「0.8%~1%前後」です。しかし都市銀行の融資審査は非常に厳しく、一般的には資産家を対象としているため、低金利ではあるものの、ハードルの高い金融機関になります。
地方銀行
不動産投資ローンを前向きに検討してくれるのが地方銀行です。各金融機関によって異なりますが、地方銀行の金利は「1%~2%前後」が一般的です。
しかし、地方銀行によっては、メガバンクに引けを取らないほどの低金利で貸し出ししてくれるケースもあります。メガバンクと比べれば融資審査のハードルも高くないため、最も相談しやすい金融機関です。
信用金庫
信用金庫も不動産投資ローンの融資をしています。金利は「1.5%~2%前後」に設定しているケースが多いです。地域密着型の信用金庫も多いため、融資できる物件のエリアを制限しているケースもあります。
ノンバンク
ノンバンクとは、融資することに特化した金融機関です。銀行とは異なり、審査も厳しくありませんが、金利が高い傾向があります。おおよそ「2%~3%」もしくは5%以上というノンバンクも存在します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、不動産投資に対して前向きに検討してくれます。金利も「1%から2%」の低金利で貸し出ししていますが、借入上限額なども設定されているため、大型投資物件には向いていない傾向があります。
不動産投資のローンの借入期間
不動産投資のローン期間は、建物の築年数と法定耐用年数が影響します。法定耐用年数とは、法律で定められた建物の年数を指し、建物の構造や用途によって異なります。
金融機関は、法定耐用年数が過ぎた物件は建物としての価値が見出せないと判断するのが一般的です。そのため法定耐用年数までの期間が借入期間となります。
下記の表は構造別の法定耐用年数の一例になります。
構造 | 説明 | 対応年数 |
---|---|---|
木造 | 2×4工法 (戸建て住宅や賃貸アパートが主流) |
22年 |
鉄骨造 | 骨格材の肉厚が3ミリ~4ミリメートルを以内のもの (戸建て住宅や賃貸アパートが主流) |
27年 |
骨格材の肉厚が4ミリメートルを超えるもの (賃貸アパートや店舗などが主流) |
34年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | マンションなどが主流 | 47年 |
引用https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/material/files/group/130/taiyounensuuhyou.pdf
例えば新築木造賃貸アパートに投資した場合、融資期間は22年です。また、築10年の中古木造賃貸アパートに投資した場合は、「22年-10年=12年の借入期間」となります。
しかし近年の不動産物件は、劣化対策等級や住宅性能評価など、第三者機関から構造や性能に関する建物強度の認定を受けている物件が多いです。そのような認定書がある場合、金融機関は融資期間を延長してくれるケースもあります。
その他にも不動産の立地が良く、安定した入居率を確保できるような物件であれば、融資期間を長期に設定することを考慮してくれる金融機関もあるので、まずは金融機関に相談してみましょう。
不動産投資ローンの融資審査基準
融資審査基準は各金融機関によって異なるものの、ある程度の審査基準がありますので、紹介します。下記の3項目の審査条件で収支シミュレーションを行い、投資する不動産がクリアできるか検証して見ましょう。
- 入居率70%での計算
- 金利4%から5%で計算
- 法定耐用年数に基づいた借入期間
入居率70%での計算
不動産投資物件は、毎月安定した収入を確保することが可能ですが、常に満額の収入を得るとは限りません。
実際に、平成30年度の賃貸物件の都道府県別「民間賃貸住宅(共同住宅)戸数及び空き戸数並びに空き室率の推計」の調査結果では、全国平均空室率は21.4%であったため、入居率は78.6%であることが分かります。
https://www.chintai.or.jp/common/img/pdf/h30akiyakakuhou.pdf
金融機関はそれらを踏まえ、入居率を70%で設定し、収益が黒字になるかを計算します。また、赤字になった場合は、借入額を減らし、自己資金の捻出などで対応することで融資可能となるケースもあります。
金利4%から5%で計算
現在の不動産投資ローンの金利はおおよそ「1.5%~2%」前後が適用されているケースが多いです。しかし、金融機関は金利を「4%~5%」と、実金利より負荷をかけて計算します。
これらは急激なインフレになった場合でも返済していけるかをシミュレーションするためです。
今の日本では低金利時代が続いておりますが、バブル時は5%から6%の金利でした。また2022年度より、米国中央銀行が利上げを発表したことにより、世界各国金利の上昇を行っています。
今後の日本の動向にもよりますが、金利の上昇が起こる可能性を踏まえておくうえでも、金融機関は高金利に設定してシミュレーションを行います。
そのため事前に高金利でのシミュレーションを行って黒字経営になるかを確認して見ましょう。
法定耐用年数に基づいた借入期間
さきほどもお伝えした通り、金融機関は法定耐用年数に基づいた期間内で返済できるかをシミュレーションします。さまざまな構造や性能に関する認定書を取得していても、法定耐用年数が第一優先となります。
しかし、昨今の建築費の向上により、法定耐用年数期間内でも返済では投資物件の収益が出ないケースも多くなりました。そのため、法定耐用年数ではなく、実稼働想定年数(約30年など)で審査している金融機関も多いです。
そのため、法定耐用年数と実稼働年数の両方でシミュレーションをしておきましょう。
まとめ
今回不動産投資ローンの概要と融資審査基準について解説してきました。冒頭にもお話した通り、不動産投資のローン審査は申込者より物件の収益性や築年数などを考慮して判断します。
もちろん申込者の年収なども判断材料となる可能性はありますが、紹介した3つのシミュレーションをクリアできれば、不動産投資家への第一歩にもなるかもしれません。
そのため投資したい不動産があった場合は、事前にシミュレーションを行い、金融機関へ融資の相談をしてみましょう。
中長期のシミュレーションについては、こちらの記事もご覧ください。