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投資用不動産の空室率は何%?空室の原因と3つの回避方法を紹介

不動産投資には3つリスク(空室リスク・家賃下落リスク・金利上昇リスク)が伴います。その中の空室リスクは常に向き合う必要があり、日々対応が求められます。

そこで今回、賃貸物件の空室率にフォーカスを充て、全国平均空室率と、空室リスクが高まる3つの原因について解説します。

最後には空室リスクを回避する3つの方法とシミュレーションを紹介します。

これから不動産投資を始める方や、現在不動産賃貸業を営む方で、空室対策を模索している方はぜひ参考にしてください。

全国の空室率は21.4%

平成30年に公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会が発表した、「民間賃貸住宅(共同住宅)戸数及び空き戸数並びに空き室率の推計」では全国の平均空室率は「21.4%」でした。

つまり、入居率は「78.6%」であることも意味します。空室率は戸建てや長屋などを除く共同住宅アパートやマンションのみが対象です。

一見東京都の空室率が最も低いと思われがちですが、入居者が多い分物件の供給も多く、データでは第3位となっています。

下記の表は「空室率が低いベスト3」と「空室率が高いベスト3」をまとめたものです。

空室率が低いベスト3 空室率が高いベスト3
1位 沖縄県(13.4%) 栃木県(31.8%)
2位 島根県(16.7%) 山梨県(31.8%)
3位 東京都(17.1%) 和歌山県(30.9%)

空室率が最も低い沖縄県ですが、県外からの移住者は増加傾向でありながら、戸建て不動産の価格が高いため、マンションなどに移住していることが要因として挙げられます。

また商圏の中心地である那覇市などばかりに賃貸物件が建築されるため、賃貸物件の分母も多くないことも要因の一つです。

第2位の島根県は人口が少なく、共同住宅などの供給戸数も全国2位となっていることが低い空室率につながっているのでしょう。

一方、空室率が高い栃木県や山梨県は、宇都宮市や甲府市という商圏がありながらも、地方の方が避暑地としての人気が高く、物件の空室期間が長いことから、上記の空室率につながっています。

空室リスクが高まる3つの原因とは

空室率の全国平均が21.4%となる原因にはさまざまな要因があるものの、主に下記の3つが原因として挙げられます。

  1. 競合物件の増加
  2. エリア人口の減少
  3. 老朽化に伴う賃貸物件の成約率低下

競合物件の増加

不動産投資に限らず、どの事業であっても競合の増加は客離れや新規顧客の獲得に影響します。

特に不動産は、間取りや採光、利便性などがほぼ同条件である物件の場合、築年数が浅く、賃料が安い物件の方が、入居者に好まれます。

もちろん不動産はひとつひとつが異なるため、全く同条件になることはあり得ませんが、ある程度の許容範囲であれば、家賃の安い方を選ぶのは必然でしょう。

また、競合物件が建つということは、そのエリアに需要があることを意味します。将来にわたって需要が増えると、従来の需要と供給のバランスが崩れる可能性も高まります。供給が需要を上回ると、空室リスクが高まる原因になります。

エリア人口の減少

2022年現在での日本の人口は約1億2,000万人ほどですが、2045年には1億人ほどになると言われています。

しかしながら、都心部の人口は多少減るものの、大きな減少には繋がらないと推測されています。

東京都政策企画局の「2060 年までの東京の⼈⼝推計」によると、2020年の人口が1,385万人でありながらも、2045年には1,312万人と推測しています。

人口減少はありながらも、大きく下落するとは考えにくいでしょう。

一方で、全国の人口減少の推測は約2,000万人と大きな数値です。つまり、全国的に人口は減りますが、地方エリアの人口が都心部へ流入する傾向は大きく変わらないとも言えます。

地方で不動産投資をしている方にとっては、人口流出は防ぎようがなく、空室リスクが高まることにも繋がります。

老朽化に伴う賃貸物件の成約率低下

賃貸物件が老朽化することによる空室リスクとしては、2つの事象が考えられます。

  1. 入居者から人気が無くなる
  2. 賃料低下によって不動産会社の仲介手数料が安くなる

賃貸物件は築年数が経つことで、入居者からの人気はなくなります。日本人は新しいものが好きという傾向があるからでしょう。

さらに老朽化に伴い、家賃は下落します。家賃が下落するということは、不動産会社の収入である仲介手数料にも影響を及ぼします。

不動産会社の担当者は、仲介手数料の金額に対してインセンティブをもらうため、家賃の安い物件より、高い物件への入居者斡旋を行うのが一般的です。

2つの理由から老朽化することにより空室リスクが高まり、入居者の成約率低下につながりやすいです。

空室リスクを回避する方法3選

では空室リスクを回避するにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは3つの方法を紹介します。

  1. 出口戦略を加味した投資
  2. 投資する不動産の世帯数確保
  3. サブリース管理による空室リスクの軽減

出口戦略を加味した投資

出口戦略とは売却を意味します。不動産の空室は、不動産を所有しているからこそ発生するリスクです。つまり売却してしまえば空室リスクに悩むことはありません。

不動産には毎月の家賃収入を目的としたインカムゲインと、売却利益を目的としたキャピタルゲインがあります。

本来不動産投資の醍醐味である収益は不労所得であるインカムゲインですが、一度に大きな利益を得ることができるのがキャピタルゲインです。

老朽化によって空室になる前に短期で売却してしまうのか、ある程度長期間保有し賃料収入を得てから売却した方が良いのか、トータルとしてどちらが有利かは一概に言えません。したがって、不動産投資を行う際には空室リスクを考慮すると同時に出口戦略も検討しながら運用していくことが望ましいとも言えます。

投資する不動産の世帯数確保

空室リスクを回避するためには、世帯数を確保をすることも一つの方法です。

例えばワンルームマンション投資を行った場合、1室だけの運用となるため、空室が発生した時点で収入が0円になります。

一方、1棟アパートなど世帯数が確保できる物件の場合、入居率0%になる確率はワンルームマンション投資より低くなります。そのため、不動産投資を行う場合は、世帯数を確保できる物件に投資することが望ましいでしょう。

サブリース管理による空室リスクの軽減

サブリース管理とは、収入が保証された管理システムです。

通常不動産の管理は、不動産会社に一般管理という形で委託します。一般管理である場合、入居者が居なければオーナーへの家賃は入りません。

しかし、サブリース管理の場合、入居者の有無に問わず、オーナーへ家賃を支払う仕組みとなっているため、空室リスクを抑えることが可能です。

サブリース管理と一般管理の違いについて分からない方は、下記の表を参考にしてください。

一般管理 サブリース管理
家賃保証 なし あり
管理手数料 管理手数料が家賃の5% 管理手数料が家賃の10%~20%
新築時の免責 なし 2か月~3か月(入居者がいても、完成してから家賃が振り込まれない期間)
入退去の免責 なし 1か月~2か月(入居者がいても、退去後から家賃が振り込まれない期間

サブリース契約は毎月の収益を悪化させるため、契約する際には慎重に検討しましょう。

空室リスク方法を実践した場合のシミュレーション

ここでは出口戦略における「売却シミュレーション」と「サブリース管理と一般管理の収益比較」を紹介します。

売却シミュレーション

空室リスクに耐えられなくなった際は、売却も一つの手段です。ここでは売却に関するシミュレーションを行います。

仮に5,000万円ローンを新築時に購入し、10年経った今、アパートを売却すると仮定します。毎月の家賃収入が40万円と仮定すると、年間収入が480万円になります。

年間収入480万円の物件を各利回りから売却価格を算出すると以下の手残り金額通るでしょう。

利回り 売却価格 残債

(35年ローン・金利1.5%想定)

税金 諸費用
(売却価格の3.5%ほどで想定)
手残り
6% 8,000万円  

 

4,100万円

1,140万円 280万円 2,480万円
7% 6,860万円 912万円 240万円 1,608万円
8% 6,000万円 740万円 210万円 950万円
9% 5,300万円 600万円 186万円 414万円
10% 4,800万円 500万円 170万円 30万円

売却価格は、相場価格だけでなく、投資目線として何パーセントの利回りで売り出すかによって決まります。購入者である多くの投資家は、利回りをベースに物件を評価しているからです。

売却価格が決まった後は、残債と税金、諸費用を差し引くことでおおよその手残り金額がわかるようになるでしょう。

ただし、上記の表は簡易計算であるため、具体的な金額を知りたい方は、不動産会社や税理士へ相談することをおすすめします。

サブリース管理と一般管理の収益比較

先ほどもお伝えした通り、空室リスクを抑えるにはサブリース管理がおすすめです。

サブリース管理と一般管理では管理手数料が異なりますが、全国平均の入居率を加味すると実際どちらの方が収益は良いのでしょうか。

ここでは年間収益を比較します。なお、免責期間は物件の状況によって異なるため、省略します。

一般管理 サブリース管理
間取り 1Kの間取り・5世帯
月家賃 40万円(1世帯当たり8万円計算)
管理手数料 2万円(5%) 6万円(15%)
手残り収入 38万円 34万円
年間収入 456万円 408万円
全国入居率を加味した収入 357.5万円

(456万円×78.6%)

408万円
差額 50.5万円

全国平均の空室率でシミュレーションした場合は、サブリース管理の方が収益は良いことがわかります。しかし実際には物件や地域、築年数によって得られる収益が異なります。

そのため上記の価格は目安としておきながら、実際のシミュレーションを行う際は、対象地域の空室率を調べて同様に計算してみましょう。

オーナーが行うべき空室対策とは

これまで空室リスクを回避する方法を3つ紹介しましたが、既に不動産を所有しているオーナーができる空室対策として有効なのは「競合物件との差別化」です。

投資物件に付加価値を付け、入居者に喜ばれる賃貸物件を作り上げるということです。

従来は宅配ボックスなどが付加価値として挙げられていましたが、現在では当たり前のように物件についています。他にもメインの個室のクロスにアクセントを入れる、外観の塗装をするといった方法もあります。

今後はどのような付加価値が物件の魅力を上げ、入居者から満足を得られるか、日々模索する必要があります。他の物件にはない価値を見つけることが、入居者に選ばれ空室を抑えるための最大の対策でもあるでしょう。何が入居者の付加価値になるかは時代によっても変わりますので、ターゲットとなる入居者のタイプに合わせて検討することが重要です。

まとめ

今回、不動産投資における全国平均空室率と、空室リスクが高まる3つの原因について解説してきました。

空室リスクが高まる3つの原因が全国平均の21.4%に繋がり、また地域によって格差が大きいことがお分かりなりましたでしょうか。

空室リスクを回避する上では3つの方法が有効です。しかし、単純に内容を理解するのではなく、さまざまなシミュレーションを行ったうえで、判断するのが望ましいです。

シミュレーションを多く行うことで、不動産知識も身につくようになり、空室が発生した場合でも対処できるようになるでしょう。

不動産投資には色々なリスクがありますので、以下の記事も参考にしてみてください。

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